乃木坂46を一日一曲語る 17日目『音が出ないギター』
はい、どうも。「まじめにふまじめ」をモットーにやってます、いたがきです。
乃木坂46を一日一曲語る。17日目は『音が出ないギター』です。
(2020年5月7日追記)この記事を加筆修正してnoteに投稿しました。今後はnoteにて投稿を続けますので、よろしければフォローお願いします。
今日のこばなし-花火の余白-
夏の風物詩、花火大会に行って来ました。いくつになっても花火は良いものです。
しかし、なぜ僕たちは花火にこんなにも惹き付けられるのでしょうか。その理由は大きく分けて2つあると思います。
1、エンタメとしての洗練度の高さ
①玉が空を上っていく(フリ)
→②一度消える(タメ)
→③花開く(オチ)
というプロセスが何度も繰り返されるという打ち上げ花火の構成は、人間の心理をぎゅっと掴んでいて、YouTuberとして動画を作る上でも参考になりそうです。
2、余白の美学
変な話、花火というのは「花火」だけでは完成しません。なぜなら皆さんの思い出の花火はきっと「花火×◯◯」の思い出のはずだからです。この余白がとっても大事なのです。この余白を埋めるのは、例えば「×屋台」「×河川敷」「×隣にいた人」「×恋心」みたいな、花火大会全体の情景やそれに結び付いた感情と言ったところでしょう。
受け手の人々が思い思いに余白を埋めるから、その経験がその人にとって愛しくてまぶしいものになる。これを僕は「余白の美学」と呼びます。
ヲタクがアイドルを追いかけるのも、僕が未完成フェチなのも、この「余白の美学」に魅せられているからだと思います。
あなたの花火
というわけで今回、僕が見た花火をあえて写真は撮らずに言葉だけで表現してみました。これを読んであなたが思い浮かべた花火は、きっとあなただけの花火です。
紺色の空に瞬く緑、赤、青、黄色、オレンジの光。空気を震わす爆発音。バンと開いたあとにちりちりと尾を引きながら未練がましく残るオレンジの花火が好きで、僕はそれを「ライオンキング」と呼んでいる。
空にはちょうどマグリットが好みそうな三日月が出ている。aikoかzozoの前澤社長あたりがぶら下がって花火を見おろしているに違いない。
僕と花火の間を大きな橋が横切っている。その橋を渡る自動車がどんな人を乗せているかは知らないが、車窓に切り取られた花火を横目に車を走らせるのもそれはそれで悪くはないだろう。
役目を終えた熱は煙となって、人知れず流れてゆく。行き先はたぶん、いつもどおりの364日だろう。だから、今、この瞬間を、僕はこの目に焼き付ける。
どうなんだろう、コレ...。
『音が出ないギター』ってどんな曲?
『音が出ないギター』は8月22日にリリースされた乃木坂46の3rdシングル『走れ!Bicycle』のType-Cに収録されています。
歌唱メンバー
歌唱メンバーは、生田絵梨花、生駒里奈、市來玲奈、伊藤寧々、伊藤万理華、井上小百合、岩瀬佑美子、衛藤美彩、川村真洋、斉藤優里、桜井玲香、白石麻衣、高山一実、中田花奈、西野七瀬、能條愛未、橋本奈々未、深川麻衣、星野みなみ、松村沙友理、若月佑美の21名です。
センター
センターは生駒ちゃん(生駒里奈)が務めています。
曲調
ギターサウンドを軸にして、これまでの乃木坂46にはなかったロックな曲になっています。
歌詞
MV(ミュージックビデオ)
『音が出ないギター』のミュージック・ビデオは、これまでにないハードな世界を打ち出したもので、退廃的なムードを漂わせるスクラップ置き場で、暗い雨や燃えさかる炎が登場します。若月佑美がドラムを叩きながら叫ぶことによって言葉にならないリアルな気持ちが音が出ないギターとなって表現されているそうです。
若と七瀬を主軸に描いたMVで、二人の関係性に想像がふくらみます。ラスサビでの演出も素晴らしいのですがYouTubeの動画では見れません。
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『音が出ないギター』を語る
知る人ぞ知る隠れた名曲って感じです。
『制服のマネキン』への布石
前に『走れ!bicycle』の記事で、“『走れ!bicycle』で乃木坂46はフレンチポップスというコンセプトの限界に直面した。それは同時に『制服のマネキン』という新たな路線への布石でもあった。”と書きました。
しかし、布石はもうひとつありました。それこそが、これから語る『音が出ないギター』です。
前述の通り、『音が出ないギター』はそれまでに無かったロックな楽曲で、秋元康が初期の乃木坂46に掲げていた「リセエンヌ」 *1というキーワードとは明らかに一線を画す、「葛藤」や「反抗」をテーマにした曲になっています。
そしてこの曲が味のある良曲に仕上がったことは、「少女たちが真剣な顔で内面に秘めた感情をぶちまけるように歌うことで、かえって彼女たちの未熟さやピュアさが表現される」という発見でもあったと思います。
この「クール路線もイケる!」という気付きは「大人や多数派への反発」というテーマを引き出し、後の『制服のマネキン』や姉妹グループの欅坂46全体のコンセプトへと繋がっていくのです。
秋元康の抽象化能力
SHOWROOM株式会社代表取締役社長の前田裕二は、著書『メモの魔力』の中で秋元康について次のように分析しています。
秋元康さん、鈴木おさむさんは極めて言語化が上手です。【中略】 言語化がうまい人には、大きく分けて二つの特徴があります。
一つは、抽象化能力が高いこと。その中でもとりわけ、アナロジー力が高い。アナロジーとは、一見無関係なものの間に何らかの共通点を見つけて、結びつける思考法です。身近で具体的な事例の特徴を探して、抽象化して、それをまた別の具体に当てはめるわけです。
-出典:前田裕二『メモの魔力 The Magic of Memos』(幻冬舎、2018年)
これは乃木坂46の曲の至るところに散りばめられていて、『音が出ないギター』で言えば出だしのところなんてまさにそれです。
剥き出しのコンクリート凭れながら
夜と世間の温度が落ちて 背中が寒い
実際にやってみるとわかるんですが、壁にもたれる時って、肩か腰で体を支えるので背中が浮いた状態になるんです。そこに冷たい夜風が吹き込んでくるから、背中が寒い。なるほどすごい着眼点です。
しかしそれだけではありません。「夜と世間の温度が落ちて」の歌詞に引っ掛かりを感じたまま聴き進むと、実は冒頭の歌詞が「世間やバンド仲間との温度差を感じ、孤独にさいなまれる主人公の心情」をも表現していることに気付くのです。あぁ素晴らしい。
少しだけ、毒を吐きます。たま~にいる「秋元康は似たような曲を量産してテキトーに詞を書くだけで儲けている」みたいに言う人は、見当違いも甚だしいことを自覚するべきです。まず、スピードと量を確保するためにはクオリティを犠牲にしなければならないと思いこんでいる時点で頭が悪いです。それから、たぶん秋元康にとって詞を書くことは呼吸と一緒なんだと思います。
秋元さんは、異常なまでの繊細さであらゆる事象にまるで「抽象化の付箋」を貼り付けるように、日々このアナロジーのための種集め作業を行っているのだと思います。
-出典:『メモの魔力 The Magic of Memos』 著者:前田裕二
僕らのまわりにいつでも酸素があるように、秋元康のまわりには詞の種がある。それを体内に取り込んで適切な処理をすれば、次から次へと歌になって放出される。それができる彼は変態にして天才です。
天才と言えば、前田さんも秋元康に引けをとらない天才であり変態です(笑)。僕はそういう人が大好きなんです。『メモの魔力』は絶対読んだほうがいいので、Amazonの貼っときますね。↓
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おわりに
どう考えても記事2つ分の文量と内容になってしまいました。普段はこんなに書きません。
てか、前田裕二しゃべくり007出るってすげーな。見るわ。
「なんか訳わかんないこと言ってるヤツがいるぞ」でも「なんかコイツ面白くない?」でもいいのでぜひこの記事をSNSでシェアしてください!切なる願いです。
では、また明日。 stay tuned!
*1:原義はフランスの女子学生という意味。初期の乃木坂46のコンセプトを表すキーワードとして秋元康が掲げた。詳しい話は第7回 乃木坂46が求めた「コンセプト」 – web青い弓「乃木坂46とリセエンヌ」の項を読んでいただきたい。